5月16日、第29回「三島由紀夫賞」の受賞作品が発表されました。
受賞となったのは蓮實重彦さんの「伯爵夫人」。
史上最高齢での受賞となり話題となっていますが、
蓮實さんにとって、今回の受賞は「はた迷惑」?
いったいどういうことなのでしょうか?
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異例の受賞会見での態度
「三島由紀夫賞」受賞にあたり開かれた会見で見せた、
蓮實重彦さんのドライな対応が波紋を呼んでいます。
まず司会から受賞が決まった際の心境を聞かれても
「ご心境という言葉は私の中には存在しておりません。
ですからお答えしません」
とバッサリ。
「申しあげません」「お答えいたしません」ばかりで
記者たちも困惑してしまいます。
極めつけに「受賞は全く喜んでいない」と発言。
「まったく喜んではおりません。はた迷惑なことだと思っています。
80歳の人間にこのような賞を与えるという事態が起こってしまったことは、
日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております。
もっともっと若い方、私は、順当であればいしいしんじさんが
おとりになるべきだと思っていましたが、今回の作品が
必ずしもそれにふさわしいものではないということで、
選考委員の方がいわば、蓮實を選ぶという暴挙に出られたわけであり、
その暴挙そのものは非常に迷惑な話であると思っています」
80歳での最高齢の受賞は快挙であり、とてもおめでたいことのはずなのに
蓮實さんのお言葉は受賞者のものとは思えない、異例の事態となりました。
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蓮實重彦とは
1936年東京府に生まれた蓮實重彦さん。
1年の浪人生活を経て東京大学へ入学し、フランス文学などを学びます。
その後留学中に知り合ったベルギー人の女性と結婚。
長男をもうけます。
著書には
「反=日本語論」(第29回読売文学賞受賞)
「「赤」の誘惑 フィクション論序説」
「映画崩壊前夜」
「批評あるいは仮死の祭典」
「表層批評宣言」
「凡庸な芸術家の肖像」(芸術選奨 文部大臣賞)
などがあり、「コマンドゥール」で芸術文化勲章も受章されています。
三島由紀夫賞受賞作品「伯爵夫人」
今回三島由紀夫賞を受賞した「伯爵夫人」は、蓮實さんの3作目となる小説。
新潮2016年04月号に掲載された、22年ぶりの新作小説です。
戦前の東京を舞台に、上流階級の青年が「伯爵夫人」と呼ばれる未亡人と過ごした
時間を過去の回想を交えつつ、つややかな文章で描いた作品。
その他ノミネートされた作品
作品名 | 著者 |
悪声 | いしいしんじ |
「ええ声」を持つ「なにか」はいかにして「悪声」となったのか― いしいしんじ入魂の書き下ろし作品。 |
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鳥の会議 | 山下澄人 |
親友の神永が、ヤクザ者の親父を手にかけた― 町田康氏大推薦の一作。 |
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憂国者たち | 三輪太郎 |
かの大罪人は三島由紀夫の愛読者だった─ 現代日本の姿と三島文学の本質を探った一作。 |
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新カラマーゾフの兄弟 | 亀山郁夫 |
ドストエフスキー未完の傑作を完結へ― 著者初小説ながら大絶賛された一作。 |
80歳という高齢の自分よりも、もっと若い人から素晴らしい文学が
選びだされてほしかったという思いが伝わってくる蓮實さんの会見内容。
今後蓮實さんの願いを叶えてくれる若い作家がどんどん
現れると良いですね。