午前8時59分60秒?
なにか変ですよね。
午前8時59分59秒の次は、
午前9時00分00秒のはず…
実はこれ、「うるう秒」によって生じた時間。
ご存知でしたか、うるう秒。
7月1日、世界で一斉に、1日を1秒長くするために
このうるう秒が挿入されました。
その時、世界はどうなっていたのか?
また、このわずか1秒がもたらした物語とは
いったい何だったのでしょうか?
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うるう秒
うるう秒の調整が行われるようになった背景には、
原子時計により時間を測定する技術が進歩したことが
挙げられます。
時間を測定する技術が進歩したことにより、
地球の自転スピードにムラがあり、
いつも同じスピードではないことがわかりました。
時点のスピードが速い状態、遅い状態が続くと、
地球の自転によって決まる時刻と原子時計によって
決まる時刻のずれが大きくなっていきます。
そのずれを調整するために用いられるのがうるう秒です。
7月1日午前9時前に行われたうるう秒の調整は、
世界の標準時を地球の自転に合わせ、
1日を1秒長くするためです。
1972(昭和47)年の導入以来、26回目。
前回、うるう秒の調整が実施されたのは2012年で、
3年ぶりに世界で同時に実施されました。
うるう秒によるトラブルは?
前回うるう秒が挿入された2012年。
その時には、一部のサーバーに障害が起きる
というトラブルが発生していました。
その経験を活かし、今回は事前に想定実験も実施、
コンピューターシステムが誤作動するなど
懸念されていましたが、企業や関係機関が対応した結果、
大きなトラブルは起こりませんでした。
東京証券取引所では、午前7時からの2時間(7,200秒)に
毎秒7,200分の1秒ずつ加えていく対応を実施。
取引開始の午前9時までにうるう秒を調整し終え、
取引にトラブルはなく、通常通り午後3時に取引を終了。
全日本空輸では事前に監視人員を増やすなどの
対応をしていましたが、運航の遅れなどの混乱はなし。
三菱電機は、システムを納入している企業や官公庁へ、
担当者が対応にあたっていましたが、
こちらも特に問題は確認されませんでした。
ちなみに、私たちが使うような、一般のパソコンや
スマートフォンでは、このうるう秒は自動的に
インターネットなどを通じて調整されます。
しかし、古い基本ソフトを使用しているコンピューターなどでは
予めの対応が必要な場合もあり、また今回は
平日に実施されたこともあって、予期しない不具合への
対応として担当者を待機させるなどの対策がとられていました。
「うるう秒」その1秒の想い
「午前8時59分60秒」。
午前9時前に1秒のうるう秒が挿入されましたが、
残念ながら一般の時計では見ることができませんでした。
日本の標準時を管理している情報通信研究機構(東京・小金井市)に
設置されたデジタル時計やその最寄り駅であるJR武蔵小金井駅などでは
うるう秒の瞬間が表示されました。
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うるう秒の瞬間を見ようと集まった人々
情報通信研究機構。
ここには、うるう秒の瞬間を見ようとおよそ1,000人の
地元の小中学生などが集まりました。
建物に設置されている大きなデジタル時計に表示されている
時刻がうるう秒に近づくにあわせて、集まった人たちからは
カウントダウンの掛け声が開始。
時計に通常にはない「8時59分60秒」という1秒が表示されると、
一斉に歓声が上がり、中には写真でその瞬間を撮影している人もいました。
参加した女子大生の方は「めったに見られない瞬間で感動しました。
ふだんは考えない1秒の大切さを考えました」とコメント。
うるう秒の見物客は他の場所にも。
東日本の電波時計などに標準時刻を発信している
福島県田村市都路町と川内村境界にある大鷹鳥谷山
(おおたかどややま)山頂の「おおたかどや山標準電波送信所」。
この送信所近くにある2カ所の電波時計モニュメントでも、
うるう秒が表示されました。
見物客の中には遠方から訪れた方も多く、電光掲示板に
「8時59分60秒」と表示されると、用意していたカメラで撮影する姿も。
田村市にも居住されている東京から訪れたという男性は
「(掲示板の写真を)ウェブで紹介する。存在が知られ、
田村市に少しでも人が来てくれたら」と想いを語りました。
また、ツイッター上でもトレンド入りした「うるう秒」。
「今日はうるう秒実施と言うことで、NICT設置の
時計がある武蔵小金井駅構内は大変な混雑…」
とうるう秒が表示されるJR武蔵小金井駅の状況が報告されたり、
「うるう秒が来るぞ」
「うるう秒が楽しみ過ぎるんだけど」
と待ち望んでいる声も挙がりました。
また、うるう秒を大勢の人が待機する様子が、多くの人が
一斉に唱えたことで有名な、アニメ『天空の城ラピュタ』の
呪文を連想させたようです。
NTTが提供している「ひかり電話」の時報サービスでは、
午前8時59分60秒と午前9時に「ポーン」という時報の音が
2回連続で鳴りました。
1秒という時間、それは僅かな時間でもあり、
偉大な時間なのかもしれません。